ウチらの命、なんぼなん?

弁護士 小池明子

「ニッポン国VS泉南石綿村」という映画を観てきました。札幌ではわずか1週間の上映期間だったので、ご覧になれなかった方も多いと思いますが、観ることができて、本当によかったです。 ニッポン国VS泉南石綿村.pdf

私は弁護団に入って日が浅いので、それほどたくさんの被災者の方にお会いしたことがある訳ではなく、被害の状況をきちんと知っている訳でもありません。長い月日を泉南というアスベスト工場しか産業がないような地域で暮らし、働いてきた人々が、アスベストに曝露し悲惨な状況にあることを、画面を通してではありますが、知ることができました。

そして、裁判所が、アスベスト被害に対して、「経済成長の上においては仕方がなかった。」と述べている部分には本当に怒りを覚えました。このことは、建設アスベストにおいても同じであり、毎日毎日、一生懸命働いて生活している名もない労働者を、国や企業は、経済的合理性を優先させて、切り捨てようとしてきたのです。

さらに、原告団が厚労省に謝罪も求めて行ったときの、厚労省の対応のひどさには、怒りと悲しみを覚えました。まずは門前払い、その後アポを取って中に入っても、下っ端の役人が対応するだけで、全く話にならない状況が延々と続きます(因みに、この門前払いをした時の秘書官は、最近、アポを取れば誰とでも会うと言っている柳瀬唯夫氏だそうです。)。

原告が裁判に勝ったとしても、亡くなった方の命が、あるいは健康な体が戻ってくることはありません。でも、せめてきちんとした謝罪と賠償を勝ち取らなければなりません。

「ウチらの命、なんぼなん?」と映画の中で言われていましたが、命に値段なんてつけることはできません。でも、国や企業ができることはそれしかないのですから・・・。

*2011年8月25日の大阪高裁判決では、アスベスト被害を「経済成長の上においては仕方がなかった」としましたが、2014年10月9日の最高裁判決で破棄され、国の責任を認める判決が確定しました。