泉南型アスベスト事件における遅延損害金の起算日に関する3件目の勝訴判決

令和3年9月22日      

弁護士 段 林 君 子(文責)

弁護士 谷 地 和 憲    

 令和3年9月21日,旭川地方裁判所において,泉南型アスベスト国家賠償請求事件について,原告の主張するとおり,国の被災者遺族に対する損害賠償の遅延損害金の起算日を石綿疾患発症日とする判決が言い渡されました。

 当該事案を担当しておりましたので,概要をお知らせ致します。

1 事案等

 本件の事案等に関しては,提訴時のコラムをご覧ください。 

板金工場において石綿にばく露した元ダクト工のご遺族が,国に対して損害賠償請求訴訟を提起しました。 | hokkaido-asbest

2 判決の概要

 本件で国は,被災者遺族に対して損害賠償義務があることを認めており,国の被災者遺族に対する慰謝料等の損害賠償債務の遅延損害金の起算日が生前の中皮腫発症日(石綿疾患発症日)か死亡日かという点のみが争点となっていました。

 判決では,原告が主張するとおり,中皮腫発症日(石綿疾患発症日)が遅延損害金の起算日であると判断されました。

 

 泉南型アスベスト事案において,当該争点が問題になり,石綿疾患発症日が遅延損害金の起算点であると勝訴判決が下されたのは本件で3件目になります。

 過去の2件についてもコラムがありますので,宜しければそちらをご覧下さい。

 遅延損害金の起算日に関する意義については,下記コラムに記載しています。

 遅延損害金の起算日に関する勝訴判決 | hokkaido-asbest

 泉南型アスベスト事件における遅延損害金の起算日に関する2件目の勝訴判決 | hokkaido-asbest

3 本件争点に関する他事件の動向

  • 令和3年4月13日付け札幌地裁判決

  札幌地裁判決が出された後,国が控訴をし,札幌高等裁判所に係属しました。

  令和4年1月27日に判決が出される予定です。

  • 令和3年5月31日付け札幌地裁判決

  札幌地裁判決が出された後,国が控訴をし,札幌高等裁判所に係属しました。

  令和4年1月21日に判決が出される予定です。

4 最後に

 前記の2件の事件においても国が控訴をしてきましたので,本件も控訴をされる可能性が高いと思われます。

 引き続き裁判所に原告側の主張の正当性を訴えていきたいと思います。

 また,本件事案は,典型的な石綿製造工場での被災ではなかったため,泉南型アスベスト訴訟の枠内で国が責任を認めるのか微妙な事案でした。しかし,国が遅延損害金の起算点を除いて,泉南型アスベストの国家賠償義務の枠内での責任を認めたことから,泉南型アスベストとしての解決枠組みに入るのか曖昧であった部分が明確になり,今後の救済範囲の予想がしやすくなりました。その点においても,大変意義のある判決であると考えています。